スナック喫茶 おしゃれ
いつものように福井県の郊外を車で散策していると、抜群に外観の優れた店を発見した。
昭和のハイカラな価値観を纏うモダンで(悪く言えば)今となっては古びれた見てくれが枯れた魅力を放つ。入るのに躊躇するような、外から中が見えない作りなのも自分にとっては期待感を煽るだけだ。
この手の店は、まずやってるかどうかすら分からないのだが、煌々と看板が開店中である事を示していてここは心強い。臆さず中に入る。
ドアが開かない、いや、僅かに開く。建物が古過ぎて建て付けが悪くなってしまっているようだ。力任せに開けたドアは内に掛かってる金属の呼び鈴をそれは大層な勢いで鳴り響かせてしまい、俺は出鼻を挫いた形になった。帰りは慎重に開閉しよう。
素敵、の一言。絵に描いたような古い飲み屋の意匠をそのまま残す店内。
「昔の高級」のイメージソースだ。古くてもお店は綺麗。
かなり年季の入った女将に話を聞くと、1980年にこの建物を作りこちらのスナックを開業。
そして今日まで40年以上建物は補修無し、特に致命的に傷んだりはしていないそうだ。よほど腕の良い大工に作らせたのだろう。
(テーブルの柄の美しさたるや。Paul Smithのシャツのよう。)
カウンターには客のボトルが並ぶ。今でも夜営業を続けているのかと聞くと、今はもう11時〜19時で切り上げ。
はっきりとは聞かなかったけど、女将もかなりの年齢だと思う。お冷を2回出したり、同じ話を何度もしたりと、長年の無理が祟ってきている様子が見て取れる。
ふと棚を見上げると、オープン当初の若かりし頃の女将の写真が目に入った。
沢山の常連に愛され、それを自在に捌く手練手管の女将の姿を想像し、40年という長過ぎる時間に思いを馳せる。
人や場所が失われ、それに伴って人々の記憶からも消えるその店の歴史を思うと荒涼とした気持ちになる。
少しでもこういうお店を記録したいと改めて思った。
そんな事を考えながらドアを開けたものだから、また勢い良くドアを開けちゃって爆音の呼び鈴が鳴り響き最悪の退場になった。
客道(きゃくどう。こんな道場は無い。)の試合だったら一発レッドカードだと思う。