セクシー三昧

インターネットが掬いきれないお店の記録

水無瀬駅前 逍遙

降りたことのない駅で降りてみると意外な発見がある。
そこに住んでいる人からすると何でもないような風景も新しく感じる。
運が良ければ良い感じの飲み屋が見つかったりする。
そんな話だ。

 

非常事態宣言前のことになるが、僕はある日電車の降りる駅を間違えた。
間違えて降りたのはJR島本駅。初めて降り立った上に、なんとなく縁のようなものを感じたので駅の周辺を歩いてみることにした。
とはいっても島本駅の前には何もない。コンビニがあるくらいだ。Googleマップを開くと、少し歩けば阪急の水無瀬駅にたどり着くらしい。ちょっとそこまで歩いてみることにした。

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ちなみに駅前の風景はこんな感じだ(Googleストリートビューより)。
降り立ってみて早速いい予感がしてきた。

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水無瀬駅は駅に直結する形でアーケードが伸びている。そこには飲み屋はもちろん、青果店惣菜屋など地域の生活に密着した形の店が多い。シャッターも少し目立つが、全く活気がないというわけでもなさそうだ。飲み屋の雰囲気も悪くない。アーケードの入り口のあたりには個人経営の書店があり、そこがまた昔の面影を残した店構えをしていた。アーケードも迷うところだが今回は外に目を向ける。

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駅の外側を歩いていると、こんな看板が。「のんた」というこのお店の「ちょい呑みセット」にひかれて店の方へ。しかし半開きの店内からはママらしき人と、常連らしいおじさんたちが楽しそうに話している声が聞こえる。その雰囲気に心が折れて引き返す。
しばらく歩くと店内で飲めそうなたこ焼き屋があったがここも売り切れですといわれ完全に心が折れてしまった僕は結局何も食べずに島本駅へと引き返した。

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しかし翌日、僕はまた水無瀬駅にいた。やっぱり忘れられなかったのだ。
早速、昨日売り切れで断られてしまったたこ焼き屋「たこ 勇」へ。
席に着き9個400円のたこ焼きを注文する。

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「たこ 勇」のたこ焼きのスタイルは「何もつけない」だ。何もつけないたこ焼きは珍しいかもしれないが、たこ焼き発祥の店と言われている大阪のたこ焼き屋会津屋」も「何もつけない」たこ焼きを推奨している。ちなみに会津屋はミシュランガイドにも掲載されており、『美味しんぼ』77巻にも登場するらしい。

続いて向かったのが「たちのみ チョットバー」だ。

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実は前日もこの店の前を通りがかり、この雰囲気に引きつけられたのだが店に誰もいないのと、店の人と目が合ったのに立ち去ってしまったことがアダとなって入店が叶わなかったのだ。しかしたこ焼きで気が大きくなっていた僕は一味違う、意を決して店の暖簾をくぐる。
しかしこの「たちのみ チョットバー」はコロナ禍の影響で一見さんは入店不可だったのだ。「すみません」と謝って店をあとにする。僕はこの店のことは一切悪くは思わない。悪いのはコロナだ。むしろ常連さんを守ろうと商売をしているところに浮かれて入っていった自分自身にものすごい居心地の悪さを覚えてしまった。
なんとなく気持ちが落ち込んでしまってこの日も水無瀬駅をあとにした。

それから僕は水無瀬駅に一度も行っていない。
水無瀬駅周辺にはこの他にも美味しそうな中華料理屋や焼き鳥屋もあった。
コロナ禍が通り過ぎたら、その時はまた水無瀬駅の地を踏みたい。
それまで「チョットバー」には残っていて欲しいと、強く願う。