セクシー三昧

インターネットが掬いきれないお店の記録

石山 大原食堂

寒い。

この日の関西は寒波に見舞われ、忘れていた冬の厳しさをついに思い出させられることとなった。翌日から雪も降るのではないかというこの日、私は滋賀県石山駅近くの大原食堂を訪ねた。

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店には年配の店主のほかに、常連客らしき男性がひとり座っていた。カウンターに腰掛けてビールを頼んでからメニューを眺める。

今日はあんかけの気分だった。

あんかけ。

スープにとろみをつけただけで、なんであんなに身も心も温まるのだろう。そして何より優しい。こんな寒い日はあんかけの優しさに包まれたい気分だ。

さらには増田薫『いつか中華屋でチャーハンを』を読んだこともあって、あんかけ欲は増すばかり。

大原食堂は中華そばを看板に掲げており、中華が売りのようだ。中華であんかけといえば…と目で追っていると、見つけた。八宝菜の三文字を。

八宝菜を注文すると、店主が慣れた手つきで中華鍋を振るう。中華だしの香りと野菜が焼けるときの香りがなんとも言えない期待感を漂わせている。

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そして出てきたのがこの八宝菜。

あんかけは期待通りとろっとしており、スープの色は濃いめ、そして真ん中には紅生姜が添えられているのが嬉しい。なぜなら紅生姜は何に乗せても美味しいから。しかし八宝菜に紅生姜は初めてかもしれない。

あんかけ欲の勢いのまま口に放り込む。

熱々のあんかけの洗礼を口の中一杯に受けるが、やがてお腹がじんわりと温かくなる。冷えた体が一気に体温を取り戻していく。

この八宝菜、野菜と豚肉だけのシンプルなものかと思いきや、イカやアサリといった魚介も入っておりそれがまた風味を引き立たせる。濃いめの味付けと紅生姜のアクセントがビールとも合って良い。八宝菜はあっさりのイメージなのでこれは嬉しい限り。

すっかり温まって店をあとにする。

もう寒さは怖くない。

ネットで調べたところによると、かす汁を出す時期もあるそうなので是非ともまた食べにきたい。

寒い冬の冷えた体に八宝菜、この優しさの虜になりそうだ。