セクシー三昧

インターネットが掬いきれないお店の記録

カフェアイビー

福井県の貴重な貴重な観光資源の一つである丸岡城から程近い場所に、しなびた佇まいのカラオケ喫茶があった。(ちなみに丸岡城は観光名所の割にJR丸岡駅から3キロ以上離れていて微妙な立地である。福井駅から出ている丸岡城行きのバスをお勧めする。)

f:id:gtr7u6ik:20210708220007j:image

果たして営業しているだろうかと勘繰ると、入り口扉にPayPay加盟店を示すプラカードが貼られており、この状況下で生き残ろうと努力している姿勢を感じ取れた。

f:id:gtr7u6ik:20210708220121j:image

この手の年季の入ったカラオケ喫茶でPayPayを導入しているのはかなり珍しい。客層からしてPayPayを、そもそもスマホを使わない年配者ばかりだからだ。

f:id:gtr7u6ik:20210708220434j:image

カウンターとボックス一つのコンパクトなスペース。そして外観の古さとは裏腹に小綺麗な店内。思ったより新しいかも。
f:id:gtr7u6ik:20210708220426j:image

50代程の店主に話を聞くと、店自体は1972年ぐらいに前店主である親が設立。2000年に現在の店主が引き継ぎ、その際に改装したようだ。どうりで、外観と内装が合わない訳だ。

f:id:gtr7u6ik:20210708220430j:image

親は健在で、注文が入った時に裏で調理するようだ。おそらく数十年来の付き合いの常連なんかも居るんだろう。インターネットに綴られない、小さなコミュニティと永すぎる時間、店の歴史を思うとこの世の店には銀河系並みの情報量と途方も無さが在るんだなぁと思う。

f:id:gtr7u6ik:20210708221904j:image
f:id:gtr7u6ik:20210708221900j:image
f:id:gtr7u6ik:20210708220423j:image

おろし蕎麦(500円)を頂いた。コシのある普通の太さの麺で、おそらく手打ちだろう。福井の年配者は何故か当たり前のように皆蕎麦打ちが出来るので、こんな辺鄙なカラオケ喫茶でも及第点のシロモノが普通に出てくる。蕎麦打ちの授業があるのはおそらく福井と長野ぐらいではなかろうか。小さい頃から蕎麦の洗脳教育が始まる。

 

平日の昼間、酒を飲んで顔の赤い上機嫌のおじいさんが店主からスマホの使い方を教わっていて、牧歌的で素敵な老後だなぁと見ていて思う。

老人が老人らしく余生を過ごす事。客観的、社会的にはどう映っているのだろうか?俺はその辺の感覚(社会性や価値観)が昔からずれているので正確な判断が下せない。若者の趣味に混じったり新しい事を始める年配者を褒め称える文化が根付いているが、それはそれで良い事なんだけど一方で老人の役割って死ぬ前に若人に歴史を伝える事なんじゃないかなとも思う。急に和歌を作り始めたり、新しい店には目もくれず昔からの店に通い続けたり、説法じみた事を言ったりするのは全部そういう所(文化を存続させたり繋ぐ事)に通ずるのではないかと俺なりに解釈する。だから極端な事を言えば若者の趣味をやる老人って実は脱税してるのと一緒で老人の義務を果たしていないのだと思う。

我々セクシー三昧の行っている事は、そういう意味では若い内から老人税を支払っていると言える、から俺らはジジイになったらめちゃくちゃ鼻に付くクリエイティブな趣味とか仕事をします。若いうちに払い終えるので。おつかれ。

 

営業時間:10:00〜22:00(客居なかったら早く閉めます)日曜定休

場所:福井県坂井市丸岡町石城戸町1-11