ななみ(京都・長岡京市)
国道沿いの風景はどこも均質化されている。日本中、どの街に行っても国道沿いには同じようなチェーン店が並び、「見たことある」光景が日本中あちらこちらに形成されている。それを無機質でつまらないと思いがちであるが、最近読んだ三浦哲哉『LAフード・ダイアリー』(講談社)にはこんな一節があり、新しい視点にハッとさせられた。
「単調であるがゆえに一層習慣に深く刻まれる味は、長い目でみたとき、ライフヒストリーの中の特異な点となり、このあとに得られるさまざまな別の味との差異を生じさせ、結果として「多様性」の一部を構成するということがありうる」
均質化された国道沿いの風景は今の社会が映し出されている。だからこそ、「かつてはどんな風景だったのだろうか」という想像が膨らむ。高度に資本化され、フランチャイズ店が並ぶ以前の光景を。ありがたいことに、今でも「かつて」の記憶をとどめる店舗は残っている。チェーン店の狭間にあるそんなお店が、かろうじて他の街との差異を我々に伝えてくれる。それは記録という形で残しておくべきものなのかもしれない。
今回紹介するのは、そんな国道沿いで昔から営まれているであろう店の話だ。国道171号線沿い、京都府長岡京市の「ななみ」である。
ハードオフ長岡京店から歩いて五分。「喫茶と軽食&鉄板ステーキ ななみ」の看板が見えてくる。外壁には「COFFEE」の文字。駐車場も広く、ロードサイド・レストランとしての趣がある。
店内は休日の昼どきということで大変賑わっている。内装からテーブルや椅子まで大事にされてきたという印象を受ける。皆マスクをしているが、どことなくコロナ以前の世界を思い出させてくれる空気が流れている。
初めての来店なので「ななみランチ」を注文する。スープはこの日は「クリームスープ」と「若竹のお吸い物」で選べるらしい。洋食中心の中で、旬の和のテイストだ。
しばらく待つ。店内は喫煙もでき、大きな窓からは温かい陽射しが差し込む。繰り返しになるが、コロナ禍の世界であることを忘れそうになる。
ななみランチが到着する。ハンバーグにエビフライ、クリームコロッケにハム。サラダとスパゲティ。口にするだけで嬉しくなるメンバーだ。小皿に筍の煮付け、白米に福神漬けが乗っていて、箸で食べるスタイルと、変に気取らないところがまた良い。
ハンバーグはこの店のウリとあって、抜群に美味しい。柔らかくジューシー。エビフライにコロッケも絶品だ。付け合わせも丁寧に作られていて、その行き届いたサービス精神に嬉しくなる。
食後にコーヒーを頂いてごちそうさまでした。
帰りはまた国道沿いを歩く。かつてあったかもしれない、そして今も残るロードサイドの風景を思い浮かべながら。